Chiyoda Gakuen
新入生の皆さん、保護者の皆様ご入学おめでとうございます。
皆さんは大学で何を学ばれるのでしょう。言うまでも有りませんが、幼児教育・保育・福祉の専門職に必要な科目の履修。そうですね。子ども理解や子どもを取り巻く社会へも関心を広げ、幼児教育や保育理論の基礎・基本から応用編までしっかり習得し、専門職としての知識とスキルを磨き養うことを決意されていることでしょう。初心を忘れずに貫き通して欲しいと願います。
でも、ちょっと待ってください。大学は生きていくための術や手立てを学ぶだけのところではありません。むしろそれは入り口に過ぎないのです。
今、ウクライナではロシアの侵略戦争によってこども達が無残にも殺されています。また世界の至る所で繰り広げられている紛争やアフリカを初め、貧しい国や地域に暮らすこども達は食べる物もなく栄養失調によって毎日、毎日亡くなっています。こんな無体を見て見ぬふりをしていたら、豊かな幼児教育の創造など夢のまた夢。
私は皆さん方と同じ年齢の頃、ある本を読んで衝撃を受けました。今から凡そ80年前、日本は無謀にもアメリカや世界を相手に戦争を始めたのです。国民を総動員して戦争を遂行するためには戦争反対の声が広がっては大変。その為戦争に批判的な思想や結社、政治活動を徹底的に取り締まり、人間の内心、心の内迄支配しようと目を光らせていました。その時、多くの大学教員が捕らえられたのですが、「大学で何を研究しているのか」と問われた哲学者が「真理の探究です」と答えるや否や「真理もくそもあるものか」と一刀両断切って捨てられたのです。真理と言うのは物事の本質を見極めようという学問の根本的問いですが、そんなことはどうでも良くてお国が白と言えば白、黒と言えば黒というほどのことでしょうか。「真理の探究」が溝に捨てられる時、人々は我を失います。今、ロシアの人々はそんな環境の中に置かれているのだと私は思います。
誰だって平和を望み、戦争はしたくないと思っているのに同じ過ちを繰り返しています。いや、だからこそ大学が何よりも大事にしなければならないのは学問の自由を守り、真理の探究に真摯に取り組める環境を自らの手で育み、握って離さない事ではないでしょうか。
大阪千代田短期大学での2年間、皆さんは理不尽だと思うことについては、だれに憚ることなく堂々と意見を表明し、教員や学生同士大いに議論を尽くしてください。
千代短の森を心地よい風が吹き抜けるキャンパスは知恵と笑顔が溢れるワンダーランド。皆さんの未来を照らす2年間であることを心から祈念致しまして、歓迎の祝辞とします。
2022年4月1日 学校法人千代田学園 理事長 髙橋 保
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