Chiyoda Gakuen
何とも腑に落ちない話が、このところ相次いでマスコミを賑わせています。「森友学園」を巡る顛末はどうなったのか、と思っていたところ、新たに学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関する経緯が耳目を集めています。勿論門外漢の私が、したり顔で何かを語ろうなどと言う積りは微塵もありません。が、少し気になることが有り、このことは記憶に留めて置く意味もあるかと考え、ここに記すことにしました。それは相互には何ら脈絡が無い事柄かも知れないのですが、何故か見えない糸で結ばれた連鎖の結節点を、其々が為しているのでは無いか、との想念がどうしても頭から離れないからです。
始まりはやっぱり規制緩和でしょうか?教育特区で株式会社による学校経営が可能となったのを受けて、ウイッツ青山高等学校が、三重県伊賀市の廃校した小学校跡を活用して開校されたのは2005年(平成17年)でした。本校で学ぶ生徒60人と通信制の2コース制だったそうです。しかし本校の生徒募集が思うに任せず、次第に通信制に偏重して行き、その過程でとんでもない事態が進行していた事が発覚しました。国の就学支援金の詐取です。授業料は全額免除。教科書はもとより、一日も登校する事無く卒業出来る高等学校。文字通り名義だけの在校生です。更に生徒一人紹介すると紹介者に5万円が支払われていたと聞くと、もう絶句です。NHKクローズアップ現代+で放映されたところでは、2014年度だけでも、学校法人へ支給された授業料支援金は1億5千万円に上るとの事。様々な事情で高等学校へ進学できなかったり、中退したけれど、向学への意欲や高等学校の卒業資格を得たいと願い、入学したであろう人達の為の就学支援金が、ごっそりと抜かれていたのかと思うと、居た堪りません。
文部科学省は、学校教育の荒廃を恐れて規制緩和には慎重だったと承知しています。この件は天下に警鐘を鳴らす象徴的な出来事として、学校教育に関わる者にとって、絶対に踏み外してはならない一線を改めて自戒する機会となりました。それから一年が経過したでしょうか。今年になって、唐突に文部科学省では組織的且つ長期に渡って違法な天下りが行われていたとの報道がなされました。些か違和感を覚えずにはいられませんでした。他の省庁ではなく、他でもない文部科学省と言うところに強烈なメッセージが隠されているのではと感じたのです。
行為は決して擁護されるものではありませんが、一人文部科学省だけの問題では無いのではと、却って訝る気持ちが増したのは事実です。その後の展開は今日的な時事問題でもあろうこと故、推測の類は慎みたいと思いますが、最後に一言。所謂岩盤規制といわれている現行法と特区の鬩ぎ合いは、誰の為にどんな目的でどう改めようとするのか、そしてそれが学ぶ主体の全ての学生や生徒にとって、真に教育の豊かな発展に資するものになるのか、予断や思惑を排し謙虚に検証するための国民的議論を興すことが、この問題に対する私たちのとるべき態度であると考えています。
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