Chiyoda Gakuen
大阪暁光高等学校第67回卒業式に際し、学園を代表して祝辞を申し述べます。卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様方には、本校教育に多大なるお力添えを頂きましたこと、高いところからではございますが、心より感謝申し上げます。ご子息、ご息女のご卒業お喜びの事と拝察致します。そして御来賓の皆様方におかれましては、ご多用中にも係りませず、万障繰り合わせてご臨席賜りましたこと、衷心より御礼申し上げます。本当に有難うございます。
さて、卒業生の皆さん、皆さん方が在校中の昨年、2018(平成30)年6月、民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。皆さん方は、成人として卒業される第1期生です。文字通り、18才成人の先頭ランナーです。この国と世界の未来に責任を背負う、その覚悟が弥が上にも求められているそんな時代に私達は生きています。そう考えると、何だか急に皆さん方が頼もしく思えて来るから不思議です。どんなに外方を向いても、毎日嫌なニュースが目に耳に飛び込んで来て挫けそうになりますが、そんなことにめげてはいられません。地球上から惨たらしい殺戮や飢え、貧困、支配と隷属を一掃し、平和な社会を実現するためには嘆いてなどいられないからです。でも、どうすれば世界中の人々が穏やかに暮らせるようになるのでしょうか。あらかじめ答えがあるわけではありません。私が今皆さん方に言えることは、自国や自分の利益第一を我先に叫んでいるようでは矛盾と対立の激化に拍車を掛けるだけで、決して和解や相互理解は進展しないだろうと言うことです。歴史的背景や政治的・経済的利害関係など、様々な問題が複雑に絡み合っていることを考えれば、どんなに困難な道のりであっても各々が対等の立場で話し合いのテーブルに着き、もつれた糸をひとつひとつ丁寧に紐解いて行く他ありません。
皆さん方は、卒業後、進学する人もいます。就職する人もいます。そして本校の看護専攻科へと進む人もいます。主権者として自らの人生の端緒を開かれます。来るべき明日は皆さん方の手の中にしっかりと収められているのです。さあ、その手をそっと開いてみましょう。今、皆さんの胸に去来したことを反芻してみて下さい。「自分良ければ全て良し」との思いが過ぎりませんでしたか。「うん、私は大丈夫」「いや、自分ちょっと危ないぞ」どちらだって良いんです。自分を見失いさえしなければ。大事なことは、他の人の意見を一顧だにしない横柄や尊大な態度を厳に戒め、謙虚であることなのですから。
さあ、三年間の学びを通して得たものを活かす時です。皆さん方の健闘を祈り、素敵な詩を贈ります。
まど・みちお さんの「なんだ」という詩です。まど・みちおさんは、2014年平成26年に104才で亡くなられました。大変長寿でいらっしゃいました。詩人ですが、皆さんは子どもの頃よく唄われたであろう童謡「ぞうさん」「一年生になったら」などの作者だと言えば、親しみを感じていただけると思います。では、ご紹介します。
なんだ・・・
なれるまでだ「わあ!」は
なれてしまえば「なんだ・・・」だ
わあ かいじゅう!
なんだ 犬か・・・
わあ UFO!
なんだ 飛行機か・・・
わあ バオバブ!
なんだ マツノキか・・・
わあ 10人ごろし!
なんだ どろぼうか・・・
なんだ 汚職か・・・
なんだ 公害か・・・
なんだ 戦争か 原爆か・・・
なんだ なんだ なんだ・・・
私は皆さん方が、「なんだ」とどんなことにも心が動かない無感動な人間になったりしないで、いつまでも瑞々しい感受性と鋭い批評精神を大切にいて生きて行って欲しいと願っています。皆さん方のこれからの人生を祝し、私のあいさつと致します。
あらためて ご卒業おめでとう。
2019年2月22日
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