Chiyoda Gakuen
平成30年度「大阪千代田短期大学 卒業証書・学位記授与式」に際し、式辞を申し述べます。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。胸躍らせて入学されたのが一昨年の4月。あっという間の2年間だったのではないでしょうか。
皆さん方は入学から卒業間際まで、全力疾走で実習、レポート作成、講義そしてテストと息つく暇もない毎日を過ごして来られました。為すべき事が余りに多くて、圧倒されそうになったことも一再ならずだったことでしょう。でもそんな慌ただしい学園生活にあればこそ、なおのこと学舎を渡る風の優しさに心癒やされ、明日への活力を養われた人も大勢おられたと思います。そして、緑の木々に包まれたキャンパスで、みんなと準備した学園祭(小山田祭)や、仲間と交わした他愛ない楽しい語らいのひと時など、今思い返して見ても、心弾む思い出は皆さん方のこれからの人生にとって、きっと忘れ難い宝物になると信じています。
その一方で、本業の学業では初心忘れるべからずの思いで自らを奮い立たせてみたものの、なかなか思い通りには捗らず、悪戦苦闘されたことも、今となっては青春の苦い記憶となりました。皆さん方は心の中に葛藤を抱えつつも、各々が自身の納得の行く進路を目指し、研鑽を積まれて今日を迎えられました。晴れて卒業式に臨まれている皆さん方を心から寿ぎたいと思います。
保護者の皆様におかれましては、学生の成長を信じ、一日千秋の思いで今日の日をお待ちになられていたことと存じます。ご卒業をお喜び申し上げますとともに、本学へのお力添えを賜りましたこと、衷心より御礼申しあげます。有難うございました。又、御来賓の皆様方には年度末のご多忙の折にもかかわりませず、卒業生の門出を祝すべくご臨席賜りましたこと、心から感謝申し上げます
さて卒業生の皆さん、皆さん方の多くは幼保連携型や幼稚園型認定こども園、また保育所や介護老人福祉施設など教育や福祉分野の仕事に従事されます。果たして労働環境は整っているのだろうか。あるいは専門職として、自分は責任を全うできるだろうかと、期待と同時に不安も抱えておられることと思います。勿論、戸惑うことや上手くいかないことにこれからたくさん出会うでしょうが、大丈夫です。自分だけ良ければ良し、等と自己中心的な言動や振る舞いを厳に戒め、心を開き、耳を傾け、仲間とともに力を尽くす姿勢を貫くこと。そしてそれこそがとりわけ実習で学んでこられたことではなかったでしょうか。いよいよ貯えてきた力を活かす時です。皆さん方夫々の居場所で、是非確固たる地歩を占めて下さい。そんな対人援助職に就かれる皆さん方が片時も忘れてはならないこと。それは命を慈しむことを置いて他にありません。同時に、自らの命をも唯一無二のかけがえのないものとして、見失わないようにすることでもあります。
皆さん方に、私の大好きな詩人、吉野弘さんの短いけれど珠玉の詩を贈ります。
生命(いのち)は
生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命はすべて
その中に欠如を抱(いだ)き
それを他者から満たしてもらうのだ
私は今日、
どこかの花のための
虻だったかも知れない
そして明日は
誰かが
私という花のための
虻であるかも知れない
見えないけれど、知らないけれど、そうして私たちは命の連鎖の中に生かされているのです。「生命はすべてその中に欠如を抱きそれを他者から満たしてもらうのだ」なんと素敵な詩句でしょう。欠如・欠落こそが、森羅万象の本質だと言われてみると、何だか自身の不全感、満ち足りなさが、逆に人を恋うるエネルギーの源泉なのだと気づかされ、私は嬉しくなったのです。たった一人の人こそが大切な人なのだと、目の前のこどもや高齢者、障害者と向き合って下さい。そしてそれは又、皆さん方の知らないところで、誰かがあなたの幸せを祈ってくれている。そんな奇跡が、私たちを未だ見ぬ未来へと羽ばたかせてくれるでしょう。
人と人との関係を結はふ営為への旅立ちを祝し、皆さん方への餞の言葉と致します。
御卒業おめでとうございます。
2019年3月15日
大阪千代田短期大学
学長 髙橋 保
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